6時00分 スタート


ほぼ先頭集団からスタート。トップ100位には入っていると思う。
白顔さんスタートダッシュでいなくなる。

塔ノ峰もあっと言う間に通過し その先の林道で、歩いている僕に
あおちゃんが走って追いついてくる。しばらく話をしながら一緒に走るが、
「僕はのんびり行きますから」と 途中で走るのをやめて、あおちゃんに先に行ってもらう。

明星ヶ岳の少し手前でChunen-runnerさん、ボンバイエさんが追いつき追い越していった。


7時40分 明星ヶ岳


トップの選手は明星ヶ岳を50分で通過したらしい。



ここまで僕は絶好調で ペースもかなり落としているので余力もあり
14時間であれば完走間違いなしと確信する。


8時30分 明神岳


下りで左足の脛(すね)の筋肉が痛み出す。攣る直前の痛みだ。
痛み出すとまったく歩けなくなり立ち止まる。しかし、ちょっと休みストレッチをするとすぐに回復する。

今度は登りで右足の太ももの筋肉が痛くなる。
同じく痛みで歩けなくなるが ストレッチをするとすぐに回復する。

しかし徐々に走れなくなり、休み休みの歩行だが時間に余裕あり。

まだまだ金時山の4時間切りは問題なしと確信する。

しばらく歩けば足の筋肉も回復するだろうと楽観的だった。

矢倉峠の少し手前でバーミーさんが追いついてくる。
パラダイス企画の女性2人を追い抜いてきたと報告してくれた。


9時32分 矢倉峠


峠で足の手当てのため藪の中に座る。マッサージとエアー・サロンパスを施す。

ちょうどその時、聞き覚えのある女性の声が聞こえてくる。

振り返ると えくんちょが歩いていた。多分、くんちんも一緒のように思われた。


ヤベー、これで全員に抜かされた(爆)


慌てて金時山を目指して歩き始める。えくんちょの4人程後ろを行く。

両足の ももと左足の脛が交互に痛み出し、足が攣る寸前だ。だましだまし歩くが筋肉の痛さは最高潮。

頂上に近くなるにつれ、
えくんちょのペースが目に見えて遅くなる。


10時12分 金時山到着


山頂でバーミーさんがアイスキャンディーを食べていた。

えくんちょはかなり
体調が悪いようだ。話しかけても殆ど口も聞かない

山頂で
苦しそうなえくんちょを目の当たりして どうして良いか分からず
オロオロしていた自分が情けなかった。

僕は離れたところからえくんちょの様子を見るが回復の兆しが感じられない。

リタイアという言葉が脳裏をかすめる。

リタイアするときは僕も一緒 かなと 「一瞬」考えたが、
えくんちょはそんな事は許してくれないなと思い別れを告げて先に進むことにした。

別れ際、
固い握手をした時、とても悲しかった。

あの時のえくんちょの顔は
何かを悟ったような優しい表情だった。

このまま
お●くなりになってしまうような
そんな見た事もない
悲しくて優しい顔だった。


10時40分 金時山出発


山頂には約30分滞在したことになる。十分休んだので体が軽い。

今までのうっぷんを晴らすように山道を一気に下ったが、
悲しいことに突然両足のももと左足の脛が同時に攣った。

恐る恐る道の横に倒れこみ足を伸ばす。しばらくして痛みは消えた。




11時11分、乙女峠を過ぎた辺りでメール着信の音が聞こえた。




編集長に何か起きたのではと心配になりザックから携帯電話を取り出した。


メールの送り主は白顔さんだった。

熱中症でぶっ倒れ、通り掛かりのランナーや役員に助けられ今搬送されています」とのメッセージ。



つい5時間前の元気な様子を見ていただけに信じられない。


編集長も
熱中症に違いない。心配になり、編集長に電話する。



しかし、電話に出ない。不安がつのる。



っとその時、背後から「
そこにいたんだっ♪」っと声をかけられる。


声の主はえくんちょだった。良かった。。。えくんちょは
元気に回復していた。

回復したえくんちょの足取りは軽い。しばらく、おしゃべりをしながらえくんちょの後ろをついていく。

しかし、足の筋肉は相変わらず痛く、えくんちょのペースについて行くのが苦しい。


いよいよ歩けなくなる。


「僕はゆっくり行くから先に行ってください。気温が高いから
熱射病には気をつけてね。」と別れを告げる。

10分歩いては、座って足のマッサージ。

そして、また10分歩いて と、 時間だけが過ぎてゆく。




山の斜面の中に消えて行く編集長の姿を見ながら「オレの分まで頑張ってくれー」と、

永遠の別れになるような思いがした。


小さくなっていく えくんちょの後ろ姿を見ながら、
えくんちょは完走するだろうが、僕はリタイアだなと
確信する。



12時00分 長尾峠


長尾峠をすぎて二つ程ピークを越えると、眼下に第一関門が見えてきた。

「あー、これで終わったな。」 と 不思議と悔しい気持ちは沸いてこなかった。

足は、激しく攣ってしまったが、体は殆ど疲れていなかったのでかなりの消化不良。
このうっぷんを晴らすためにも来年もこのレースに出ようと心に
った。


12時40分 第一関門


最後、走って関門を通過したがったが、
走ることは全くできなかった。



第一関門には、白顔さんとバーミーさんがいた。
搬送と聞いていたのですでに病院だと思っていたから
ここで再び白顔さんの姿を見る事ができて
安心した。とにかく無事で良かった。


13時30分、収容バスに乗ってゴールへと向かう。

途中、
芦ノ湖キャンプ場あたりを走る選手を眺めて、心の底から拍手を送りたい気持ちになった。


14時00分 ゴール到着




荷物を回収し、冷たいシャワーを浴びる。



16時30分 編集長からメール



05/27 16:30

from:編集長 
件名:箱根峠でまさかのリタイア

本文:



乙女峠の先で見たえくんちょの
力強い後ろ姿を思い出すとリタイアが信じられない
えくんちょのゴールシーンを見たかっただけに残念だ。


17時〜


知人の奥様がゴールしてきた。トレイル・レース初参加で11時間台は凄い。
その直後に表彰式がとり行われた。。


18時14分


ゴールにえくんちょが戻ってきた。少々、はにかんだ様子の笑顔を見て安心した。


18時30〜


ボンバイエさんがゴール!応援に来ていた
お子様と手をつないで感動のゴール!!!

19時00分


くんちんがゴール!
確実に強くなったくんちんに感動!!!



20時00分 閉門


箱根の熱い戦いは終わった。





箱根備忘録

2007年5月27日 THE NORTH FACE エンデュランス ラン OSJ ハコネ 50K  箱根トレイル

文:北リタ記者